オレで いいと?

たまに親父が

二千円ぐらい持ってきて

「煙草とビールば 買うてきちゃってんやい
  あと するめと豆かなんか てきとうに選んで
     おまえも なんかひとつ買うていいじぇ」

て 言う

そういうお使いは 

オレ けっこう好きやったんよね

なんていうか
普段はこっそり買いよる煙草やら酒ば 
堂々と買う時の気分が ちょっといいんよ

よっしゃ行っちゃろう!

オレは チャリ飛ばして
駅前の 「いでストアー」 に行った

キリンビールとセブンスター、 するめに、 豆、

オレのお菓子は 

当時 発売開始したばっかりの 
カルビーポテトチップスば 買うことにした

藤谷美和子が「100円でぇ〜、、、」ってCMしよった 

可愛かったね〜

で 意気揚々と帰ろうとしたら

宿命のライバル 小田巡査がやって来た

「おお? Gやないや なんしようとや
  なんやおまえそら 酒と煙草やないや!」

「違うっすよ! これは親父のお使いやけん」

「ほんなごとや貴様ん 家に電話するぞ」

「ほんとですって! だいたいオレはセブンやなくてハイライトやし 
   こげな派出所の近くの店で 買うわけないやないですか」

そう言うたら

妙に納得して 小田巡査は帰ってくれた

そして その日の夕方

オレが家で トムとジェリーでも見よったら
電話が鳴って ダチの K やった

「G すまん、ちょっと代わるわ、、」

「おお Gか、おまえちょっと身元引き取り人になって
      和白派出所に来ちゃらんや?」

それは 小田巡査やった

「はぁ? オレでいいと?」

そら 事情はすぐ分かったよ
K の両親は外国に出張しとるからね
来週まであいつ 家に一人だけやもん

K がやったんは バイクの無免許運転やった

公道やなくて 空き地でやったんで
小田巡査は こっぴどく説教して

あとは簡単に済むごと してくれるってわけよ

あったかい 昭和の警官なんだよね

それでまあ

オレが迎えに行って
お茶ばすすりながら また一緒たくりに説教されて

「おま〜ち、警官にならんや? オレが紹介文ば書くじぇ」

って 最後はまた同じ話なわけよ

なるわけないやろって

若者ば紹介したら なんか利益があんのかね
ひつこかったんだよ あの人

そんなさ 

就職して金稼いでからが
やりっぱなし遊ぶ 本番なのにさ

警官やらなったぎんたい な〜もできんやない

飲んで暴れることもできんし
女ば天神で引っかけて やりかますこともできんとばい

気持ちは 有難いし

そこそこの給料だろうとは思うけど

やっぱ遠慮するげな。