沼と 変人

昭和の 50年代はまだ

田舎に行きゃ 変なやつがおって

あれは、三苫から新宮町に続く田舎で
竹林があって 沼がいっぱいあって

誰もおらんごたあ場所に
ポツンと 崩れかけた家があってね

髭もじゃで 歯のほとんどない
60ぐらいのおいさんが 

一人で 住んどった

オレらが なんで沼に行くかというと
そこは 蛇の密集地でね

行くと だいたい
10匹は ざわざわって逃げ出すし

巣穴も無数にあったね

それでまあ、度胸試しに
誰が一番多く 蛇ば捕まえきいか 競うわけよ

まむしに出くわすかは 運次第たい
咬まれれば、 寝込むからねぇ

多分 捕まえた蛇で最大のやつは
2メールの 「青大将」 やろ

昔はおったんよ そんなのが 


で、 

そのついでにおいさんも からかって帰る

「一人でなんしようとな? おいさん!」

て、言うたら

ガラの悪い三人組やけん 嫌っちゃろう 
困って 歯のない顔で笑うだけ

「煙草いるな? やろうかおいさん」

て言うても 笑うだけやった

おいさんは 

缶やら瓶やら集めたりして
なんとか生活しよう感じやったけん

オレら 沼に行く途中の空き地やらで
缶やら瓶ば集めて 持って行っちゃったことあるけど

そん時も

頭ば下げて 笑うだけやった

そのおいさんは
けっこう畑に いろいろ植えとって
鶏もおって 卵も産ませて食いよって

オレ ガキなりに

なんか このおいさんは自由やなぁって
人間の付き合いが 好かんとばいねぇ〜って

なんがあったか 知らんけど
とりあえず 家族がおらんとばいって思って

でも 
カッコ悪いとは 思えんでね

よう見たら 端正な顔立ちしとるし

おいさんの家やら 置いてある道具やら
自分で作ったんやろうね〜て思ったら

妙に 引かれたよなぁ〜


おいさんは 

オレらが来ると めっちゃ迷惑やったろうけど

オレとしては
こういう生き方もあるんだってこと 学んだ気もした

あの おいさん

最後は どうなったんやろ、、、。