就職試験 其の一

高校三年の三学期

求人案内って言うんかな

学校に来るじゃない 企業から 
「明るく活発な人材求む!」 みたいなやつ

当時は 

けっこういっぱいあったよ

高卒でも、肉体労働から経理から営業から
K高レベルのポンでも どっか入れた時代よ
自衛隊に入るやつも 多かった

オレなんか

明るくて活発なのは、確かに合っとるけどね
問題なのは 人相よね

だけん、まゆげも剃り込みも 夏からは手入れせんで
うっすら 生やしてきたのは、きたのよ

こうなりゃ他人より先に就職決めて
卒業までのんびりしょうと思いよったからね

オレは とりあえず

入社試験が早い会社ば見つけだして

「うん? インテリアの何とか、、、営業?
     ヨッシャ! まず ここ受けたろ〜」

ぐらいの感じで

同じクラスのダチにも声かけて
二人で職員室に走って行った

「先生! オレら ここ受けるばい」

「なんで ここがいいとや?」

「その会社の試験が 一番早い時期にあるけんたい」

「おまえら、そげな軽い気持ちでいいとや?」

「いいって先生! 内申書で どうせ落ちるっちゃけん
  ガンガン数打って出とかないかんったい オレら」

「まあ、そう言やぁそうやけどなぁ、、、」

て、ことで先生も納得し

オレは 

学年で一番早い 10月の10日に
雑貨の問屋っていう会社を受けることになった

そんで

一緒に受けるダチときたら 姑息にも襟足やら刈り上げて
軽〜く横分けやら しやがるし

オレより かなり頭もいいんで
どうせそいつだけ受かるっちゃろうね〜って思ったばってん

オレもやっぱ 
やるからには負けられんけんね

いつもの床屋に飛び込んで

「角刈りにしちゃらんですか!」

て、言うた

「おお〜? Gくん何ね? 煙草でもバレたとね?」

って、床屋の親父が言うたけん
オレは 就職試験があるったいって言うたら

「Gくんは、永ちゃんのリーゼントば貫くっちゃなかったとね?」

って 笑うけん

「髪は 受かってからまた伸ばせば よかやんね」

って 言うたら

「あっはっは〜 そら詐欺ばい Gくん〜」

って 言いやがったんで 
うっせ〜って言ってやった

髪が終わったら 今度は制服やった
とにかく自分と同じ体格の 真面目なやつ 見つけて

おまえ! それ! 規定の学生服
一日だけ貸してくれ〜って 頼む

それが終わったら

かあちゃんに 「まゆげ描き」 借りて
普通に見えるまゆげ描きの練習も したよね
なんせ オレのまゆげ 1ミリしかなかったからさ、、、

なんやかんやで

けっこう忙しかった

結局はダチより

オレのほうが そうとう姑息だよな〜なんて
思いながら

試験 当日はやって来た


続く。