脱走 其の一

オレたちは ほとんど毎晩 遊びまくった
メンバーは いろいろやけど全体では8人ぐらいかな
歩いて15分前後の 同級生たい

オレの部屋は都合よく低い窓があって
ラジオで オールナイト日本やら スマッシュイレブンを
聞きながら エロ本でも見てると
こっそり誰かが迎えに来るわけ

「起きとうや〜行くぜ〜」

目的は かっぱらいが多かった
自動販売機と車上荒らしを まあ専門にしてて
深夜は犯人が特定できそうなんで
かつあげやら引ったくりはやらない

バイクも使わない
徒歩で 闇に紛れるのが一番よかとたい


金ができたら 安全ラーメンか赤のれんで飯食って
ゲームセンターやら行くけど
実は田舎は それしかないわけよ

コンビニもない昭和の 真っ暗な夜よ
他に行くとこは 溜まり場しかないとたい


そんなの ひっくるめて
オレたちは 脱走 と呼びよった


ダチから電話で  「今日 脱走しょうか?」
という合言葉は 深夜徘徊のことをさす言葉

いい響きでしょう  脱走

夜には自由があった 無限に広がる世界やった
昼は先公から叩かれ 帰れば親から叱られ

そんな現実から脱走して オレたちだけの時間やった
煙草吸いながら 酒飲みながら しゃべくって

警察にさえ捕まらなければ
5〜6時間は やりたい放題やんね

光ってて 楽しくて 叫んでたよいつも

みんな走っとった 走りまくっとった。