やっちゃった 其の二

会社に 吉田さんていう経理部長がおった

でっぷり太って 赤ら顔っていうのかな
とにかくガミガミ うるせ〜んだわ

朝礼になったら 必ず出てきて
自己啓発だ! 売上向上だ! って怒鳴ってさ

真っ赤になって演説するわけよ

誰も聞いてねえのに 可哀そうなおっさん
毎回同じこと 繰り返すんだよね

昭和の頃は けっこうそんな上司多かったよね
気合いだけで 経済が発展しよったからね


ある日の午後

オレが車で営業から帰って来る時
めちゃくちゃ うんこがしたくなってさ

昼飯ん時に
王将でビール飲んだんが いかんやったかも知れんし

しかも得意先でトイレに長く入って

「うんこしたなこいつ」

と 思われるのも嫌やったんやけど

あと 5〜6分で会社に着くぐらいから
下腹がず〜んず〜んと 痛くなってきて

もう ケツの穴から少し出たんじゃねえかって思うぐらい
正直 ヤバかったのよ

そんで 会社に着いて

車から降りたら ケツの穴を指で押さえて
しかしダッシュはできんわけ、 出そうだから

腿を固く閉じて 膝から下だけで競歩する感じ 分かる?

で、やっと便所に入って
ガチャガチャッって ドアが固いのよ!

しかも男のうんこ用は 一個しかないし

もう あったまにきて ガチャ〜ンって開けたら
吉田部長が うんこしよった、、、

その便器は 奥に向かって設置してあるんで
部長の白いケツ モロに見てしもうた

「ああ〜っ な、なんだね!」

部長の 半分悲しくて 半分怒ったような声

「す、すいませ〜ん!」

オレは 慌てて閉めて ダッシュで倉庫に逃げ込んだよね
それで遠くから 物の陰から様子ば見て

部長がトイレから出ていくのを見届けて
ゆっくりとトイレに 行ったんやけど

不思議にね うんこが一度引っ込んだっていうか
余裕で ブリブリ〜としながら オレは煙草に火をつけて考えた

謝りに行くべきか、、、はたまた なかった事にするか、、、

デスクに謝りには行けねえな だってまわりに女子社員いるし
かといって あの部長と二人きりになるタイミングもないよね〜

まあ、せまい事務所やけん
すぐにアクションしとかんと まずいやろということで

オレは 部長の近くに寄って
目と頭を微かに下げて 聞こえんぐらいの声で

「さ〜せんした、、、」

って言うた

そしたら部長が 机に置いた左の手のひらを
少しだけ開いて見せんしゃったやね

はぁ〜良かった

一番プライドを損ねない対応やったかも知れん
その後のお叱りは なんもなかった。