鶏を 食った話

ある時オレが 

箱崎の 「放生会」 で

「ひよこ釣り」 して 
三羽 持って帰った

多分 色は

ナチュラルなやつと
ピンクとグリーンに 着色されたやつやったと思う

初めは めちゃくちゃ可愛くて
ダンボールなんかに入れて

部屋で ピーピー鳴きよったけど

そのうち若鶏になりかけたんで
オヤジが家の横に 鳥小屋ば作った

三羽は

鶏用の餌の他に
放し飼いで菜っ葉やら バッタやら みみずやら 食って

ピンクとグリーンは 順調に成長したばってん

そのうちナチュラルだけは 
なぜか 二羽にいじめ殺されたんよ

そんで残った二羽やけど 

とさかが立派になってきた頃から
昼夜 かまわず鳴き続ける バカ鶏になってきたんでね

「さあ、そろそろ食おうか!」 

って 親父が言いだした

まあ 昭和だし

けっこう うちの家族って
可哀そう〜! なんて やわなこと言うやつ おらんし

貧乏ってのも 確かにあって

よっしゃ食おう!ってなった

まず 親父が

鶏の首根っこ捕まえて捻り回してさ
窒息死するまで オレも一緒に押さえたんやけど

動物の息の根って
けっこう長くて 力も強いんだよね

「バタバタ しやがって 
  首が折れとうけん どうせ生きられんとぞ」

オレが ぶつぶつ言ってると
さすがに 弱くなってきた

あん時 感じた

生命が 手の中です〜っと抜けていく感触っていうか
鶏殺したんよ、、初めての体験やった

そして 一瞬

人を絞め殺した 凶悪犯の手の感触って
こういう感じなのかなぁなんて 考えてしもうて
ちょっと 妙な興奮というかなぁ、、、ヤバイよねぇ

そのあとは

すぐさま熱湯に浸け込んで柔らかくして 

毛ばむしりよったら
手がベッタリ 油で真っ黄色になった

そして 親父がケツのあたりから包丁ば入れて
内臓部分ば スポッと取り出して

いろんな肉の塊に 早変わりってわけ

まあ うまかったよ

出身は ブロイラーやろうけど
育ちが 地鶏に近いからかな

いずれにしても

以前にイノシシの話でも書いたように

ああいうのは (殺して食うみたいなこと) 

経験して良かったと思う

パックの切り身食ってるだけじゃ 
分からんこともあるよ

魚だって でかいやつは 血もドバッと出るじゃない

あんなの 

さばいてみて はじめて
生命の大切さを 実感できたもん オレ。