たかこ って女

ちょうど 桜が咲く頃

鹿児島本線 登り普通列車
たかこって女が 出没するごとなった

そいつ 

よう分からんばってん

高校には行きよらんで
水商売かなんか行きよるごたあ 感じで

ジャージやら ジーンズで
ダラッとおった

オレの直感では タメやないかな と見た

そいつね

オレらが乗る時間に しゃっちがおってくさ
ぶりぶり こっちに色目ば使うわけよ

色目っていうかねぇ
まっすぐ見てくるわけさ いい度胸しとるんよ

まあ そげんブスでもないけん
オレも悪い気はせんで 

ちょっと話しかけてみた

「お姉ちゃん、どこの人?」

「あんたには 教えられ〜ん」

「名前は?」

「たかこ姫、、、」

ちぇっ なんやこの女 
くそ面白くもない

さてはこいつ ちょっと イッとるなぁ、、、

バカと話すと あたま痛くなっからな

なんて考えて 
もう相手にせんごとした

でも 何日かして また寄って来て

「兄ちゃん、久しぶり〜」

やら 言いやがる

お蔭でたった今 話しかけた女にも 逃げらるうし
ほんっと 頭にくるやつなんよ

そんで

「ねえ、スペクター欲しい!」

スペクターって サングラスの名前なんやけど
安いのでいいけん くれって言うわけ

事実 ウルトラマンと四十五度しか 持たんオレは

持たん!って言うたら 
かっぱらってくれって言う

「自分で かっぱらわんかボケ! 新宮の寿屋の二階にあるぜ!」

って言うと

新宮で降りるけん 付いて来てくれって 
ひつこく言うわけよ

もう面倒臭えなぁ〜って思いながら 
まあ一緒に行ってやって

そしたら

売場でも もたもたしてるんでね
イライラしてね 

オレが一個 わざと落として
すんませ〜んと言いながら 一個ポケットに入れた

「おら! もう世話焼かすんなよ おまえ」

うんざりした気分で 寿屋ば出て 
サングラスば 渡してやった

「あんたくさ、万引きのプロやねえ」

「そげん言われても な〜も嬉しゅうないったい
         お礼はいいけん はよ帰りやい」

女ば 

国鉄新宮駅まで送る道すがら

こいつ、オレに惚れとるはずや、、、ひひひ
そういやあ どこの土地の女かも知らんやったな

いや まてよ

こんな女と付き合ったら 振り回されるに決まっとる
絶対 彼女にはせんどこ〜

つまみ食いぐらいならいいかも、、、けけけ

なんて 考えよったらたい

女が くるっと振り返って

「今日はありがとう! 
  このサングラス 彼氏が喜ぼうやぁ」

って 言いやがった

へっ、、そういうこと?

ちきしょう〜 オレってやつは

情けねえ。