白の カマロ 其の二

「人が気持ちよう無線ばしよったらなんや!
    死にたいとか貴様んたちゃ おおっ!」

左側のチンピラが 

短めの日本刀ば シャキッって抜きやがった

オレの背中には冷たいもんが走ったばってん
番長は違ったみたいで 急に無言になって 一歩出た

覚悟を決めたんだろうね

いまだ喧嘩無敗なんて奴は
これだからいやなのよ

番長の目が だんだんすわってきた
オレ、ヤバイと思うたけん さっと出て

「ほんと、すんませんでした」

って 言うたらさ

カチャッって 番長が時計ば はずしたんよ

オレは内心

「うわぁ〜これはヤバイぞ、明日の新聞には載りたくね〜な〜、、」

なんて考えながら

とにかく石か棒かないかなぁ〜って 目で探して
心臓がバクバクしてきたよね

ばってん

その光景に押されたんか知らんけど

右側のチンピラが 
振り上げた日本刀ば ひとまず下げさせて

「貴様んら、ほんなごと 分かったとやぁ〜!」

って 折れてきたけん

「早良から来て、よう知らんやったとです、勘弁して下さい」

って ダメ押しして

あとの二人にも目で合図して
ダチも さ〜せんしたって言うて 頭下げて

そしたら番長も 
しぶしぶアゴだけ出して 会釈したわけたい

そんなわけで

「今度から気をつけれよ! バカどんがぁ!」

っていう 捨て台詞ば残して 

まあ

チンピラは去って行ったって話なんだけど

それからね

半年もせん頃やったかね、、、

当時 そのカマロの連中はよく志賀島あたりに現れて
暴走族狩りっていうか、、脅して回っとったらしいわけね

無線もやるけど、クスリもやってたんじゃないの
当時はそんな連中が多かったから

ところがよ 

ある朝の新聞に こう出とった

* 海の中道でカマロ事故で全焼 二人の焼死体みつかる *

やっぱな〜

多分だけど しまいにゃ囲まれてやられたんだと思う
あの頃の暴走族は マジだからね

でもさ

あの日、番長ば止めきらんやったら
オレらが殺されたかも知れんし、逆に殺したかも知れん

うまく切り抜けて ほんとに良かったよ。