壱岐の女 パートⅡ

その日はダチと

天神の「信長」で、焼き鳥ば食った

ふと隣のテーブルば見たら
なんと若い女が二人で飲みよるやんけ

そんなのさ 

今じゃ普通かも知れんばってん
当時は 珍しい光景やったとよ

まあ、そんなに美人やないけども

「彼女たち!一緒に飲もうか」 

とは 言うよねやっぱ

「うん、いいよ飲もう飲もう!奢って〜」 

ってさ ノリノリよ

めっちゃ楽しい女たちやね〜って思うたら
そいつらは壱岐の女やった

そんで綺麗な方とオレは どっかで飲み直すことになり
あとの二人は 帰ることになって別れたんよね

「今からどうする? パブにでも行こうか?」

そう オレが言うと

「疲れたけん、あたしのアパートで家飲みにしよう?」

って言うのよ

そんなもん 下腹がビクッってなるに決まっとうやん

やっぱ 話が早え 
壱岐の女は男前やなぁ〜って思った

タイプ的には そうねぇ〜

杉田かおる、、島崎和歌子、、観月ありさ、、みたいな

楽しいけど 色気がまったくない感じで
なんだか妙な関係になりそうだぞと感じつつ

西公園の近くのアパートに オレたちは着いた

そこはなんか 木造の古いアパートの一階で
そのまま女が どかどか部屋に入ったんで聞いてみると

今日は鍵もかけんで出かけたげな

「おまえ、そりゃいかんぜ」 

って言うと

「盗られるもんやら なんもないもん」 

って笑うんよ、考え方がなんかちょっと違うよね

でも

それから2〜3回は遊んだかな
お互いにどうでもいい感じでは あった

ある日の土曜日

会社の飲み会のあとにアパートに寄ってみたら
玄関が閉まっとって 

よしよし、鍵かけて出かけたなって喜んだのも つかの間
外に面した窓が開いとった

「あのバカ、ほんっとに不用心なんやから、、、」

仕方ないからオレは 泥棒のごと窓から侵入して 
留守番してやったわけよ

そのうち ベッドでウトウトして朝になった

日曜やけん、会社は休みやけどさ
帰ってこんとよあいつ、オレはどうすりゃいいのよ

と、思いながら洗面所に行くと 
うん? 男物のパンツ? それに肌着も、、、

こらぁやられたぞ、、

「オレは何人の中のひとりかな?、、、」

なんて ぶつぶつ言いながら

もうこんな関係を続けたくはないし

帰って来る前に退散せんとまずいんで ベットメイクして
飲んだジュースは自販機で買って返して

窓に付いた泥も拭き取って とっとと帰った

後日、やつから電話で

「こないだの夜さ、うちに来た?」

って聞くんでさ

「うんにゃ、会社のもんと朝まで飲むって言うとったやん!」

って 誤魔化して

「それはそうと 今度いつ会う?」

って聞くんで

「悪いけどオレ、、、好きな女ができたけんやめとくわ」

って言うと

「ああ、そうなんだ、、、」

で、ガチャッって切れて終わり

ほっと一息ついたね

昭和はこういうやつ いたのよ
肝っ玉かあさんみたいに 誰でも受け入れてしまう女

お互いにだらしないんだけどさ 
心は ほんとにいいやつなんだよね

ベビーブーム生まれで、受験戦争に負けたオレ達

あの頃 何を求めてたんだろう