シャコタンの感動

「水曜の夜やったら、先輩が改造しちゃあげなぜ〜」

ダチから電話があってね

オレは その日の会社の残業は逃げ帰ってもうて
あれは〜夜、9時頃やったのかなぁ

指定された小田部あたりの 板金屋の裏に
愛車のブルを乗り入れたわけよ

そしたらダチの他に 
ガラの悪い連中がぞろぞろ出てきた

地元に暴走車が一台増えるってこと
やっぱ見に来たかったのかね

まわりの駐車場には 銀のセリカやら紫のケンメリやら
そうそうたる改造車が集結しとって

なんか 嬉しかったよ 

「おお〜この車や? ショックとサスはもう届いとうじぇ」

話しかけてきた人はやくざかと思うたばってん
板金屋の社長やった

「言うとくばってん、警察に捕まったらくさ
     オレんとこで改造したやら言うなよ」

「分かりやした!」

改造は バタバタ始まった

なんも分からんオレは 手伝いもできんけん
まあ、人数分のコーラやらジョージアやら買ってきたりした

「おいGくん、強化サスは 2巻半ぐらい切っとこうかね、
  それぐらいやったら踏切りやマンホールば気にせんで
                  だいたい通らるうばい」

「はい、それでお願いします!」

「これ、カヤバのガスショックね、これば付けるけんね
      帰りにあんまり飛ばしやんなよ、跳ねるじぇ」

「分かりやした!」

そんで最近オレは

MOMO のハンドルを会社関係の人から安く買って
助手席に置いとったんよね

それに気付いてくれるかな〜と思うたら
やっぱ気付いてくれて

「この、MOMO のハンドルも付けるっちゃろう?
        こらぁサービスにしとくけんな」

「ありがとうございま〜す」

と、まあ 優しい社長やった
昔は 伝説的な喧嘩番長やったらしいけど、、、

とかなんとか言うとるうちに
さすがに手慣れたもんで オレの車はシャコタンになった

ブルーバードは4輪独立やけんね
ちゃんと ハの字ば かいとる カックイイ〜

いくらか忘れたけど 

部品代とめっちゃ安い手間賃払って
社長に

「ありがとうございましたぁ〜」

て 言うたら 

「おおよかよか、とにかく死なんごとせれよ」

って 笑顔で言われた

よっしゃ

とりあえず走ってみろう!

オレは そろ〜っと202号線に出て糸島方面に走った
車体が ゆっさゆっさ揺れてね

スピード出しても、地面ば這うように走るわけよ
特に 信号待ちからスタートした時 車体が沈まんから加速がいい

急ハンドル切ってみた

カクン! カクン! と曲がってくれる すげ〜

本当に 感動の瞬間やったね
これが シャコタンかぁ〜って 

ワオ〜!

天下取ったごたあ 気分やった
念願の車を手に入れて、怖いもんは なんもねえって感じ

あの、アルバイトとカツアゲの 
不安定で くそ貧乏な高校時代に別れを告げて

馬鹿でも何でも 今はひと月働きゃ給料が出るんだから

酒も飲みに行けるぞ、、女とデートで恥かくこともねえぞ、、
なんせ、車があるだけで 自由にどこでも行けるじゃん

あっ、そうたい
天神でナンパもできるやん

雨が降ろうと 雪が降ろうと
オレだけの居住空間が手に入ったわけよね

最高やったね

こっからが

真の青春じゃないかって 思ったね。