かっ飛びくん 其の二

その日もまた

朝6時から 寿屋の掃除のバイトば終らせて

8時5分の 
鹿児島本線 下り普通列車に乗り込んだ

すると 隣の車両から
折尾のダチがバタバタ〜ッて来て

「おまえ知っちょーや? N が事故ったらしいじぇ」

って 言うた

「なら、今度の日曜でも 見舞いに行っちゃらないかんねぇ」

なんつって 笑ってはみたもんの

なんか 

妙な気持ちていうか 胸騒ぎていうか、、、

そしたら

朝のホームルームで
担任から信じられん言葉が出たんよ

「皆さん、今朝 2年生の N くんが
    バイク事故で 亡くなりました」

オレ、 はぁ〜?って

嘘やろぉ?って思って

4時間目まで ぼ〜っとした感じで

学食でも その話でみんな盛り上がってんのに
なんか オレだけ ぽつ〜んて しとって

「120キロでガードレール直撃らしいじぇ〜」

「道路の横の川に 浮いとったげなぁ」

ひでぇ話だよね

そのうち 

なぜかオレは
だんだんと腹が立ってきてね

「なんしようとや あのバカが!
  オレがあんだけ注意してやっとろうが ボケが!」 って

叫んでしもうた

まわりから どげんしたとや?って言われたけど
仕方なかったんよ 心の底から怒った

怒ってないと 
涙が出てくるって 思ったから

そのあとオレが 

なんとなく体育館の裏ば 歩いとると
玄海町の H が追いかけてきた

「そげん 怒りやんなって
  オレは分かるばい、オレもダチが死んだけん、、、」

その言葉ば聞いた途端
もうダメやった

H の前でだけ 
オレは声ばころして 少し泣いてしもうた

「あれ、おまえになついとったもんねぇ、、」

そう しみじみ言われたちゃ 困るのよ
そんなに可愛がったってほどやないもん

「オレが泣いたとば 他のもんに言うなよ」

「おう、、」


その時の オレの胸の中は

止められたかも知れんていう
虚しい 敗北感だけやった

だけん 泣いて恥かしいというんやなく
あいつのために泣いた 「いいやつ」 になんか

思われたくなかったんよ

それだけやった。