先公 K 其の三

先公 K との確執は

その後も 延々と続きながらの
ある 夏の休日やった

ちょっと 海でビールでも飲もうかって話で

集まったメンバーは 

オレと 水産のやつと 高校に行ってないやつ
それに 女たちで 合計 5人

そんで ダチの車(ハコブル)で
新宮の波止場に行ったわけよ 

新宮の海岸ってのは

左側へ 岩場を進んだ先に広場があって
バーベキューするには いい所やったよね

オレら まあ

酒飲んだり たまに潜って ビナやらタコが獲れたりして
楽しいひと時ば 過ごしよったとよ

そしたらなんか 向こうから
大人の男女が 4人やってきてサ
バーベキューの準備ばしようね〜と思うたら

急に その一人が 走ってきたんよ

「おまえ! G やないや、なんしようとや貴様ん!」

そいつは 先公 K やった

オレは たまたま
煙草吸いよらんし ビールも持たんやったけど

そこらじゅうに転がった空き缶と吸い殻は
隠しようが ないわな

オレが 黙っとると K は

「停学にせん代わりに 来週 坊主にしてこい!分かったか!
    それに 他のおまえらもなんや はよ片付けて帰れ」

「ちょ〜待ってよ、オレな〜もしとらんやん」

そう オレが焦って弁解しよう時やった 

突然 オラァ〜言うて

高校に行きよらんダチが 立ち上がって
先公に近づいた

「コラ貴様ん、G は海水浴に来とうだけやろうが
  証拠もなしに因縁つけよったら しまえかすぞ コラ!」

「な、 なんや君は、、、」

「オレぁ高校も行きよらんけん 先公やら関係ないっつぉ!
  おまえの嫁さんの前で ボコボコにしちゃろうか 貴様んコラぁ〜!」

そしたら K の野郎 

顔色が真っ青になって
黙って逃げ戻って

荷物片付けて 遠くに移動しやがったんよ

移動中 ちらちらこっちば見ていた奥さんらしき人
これがまた 綺麗な人でね
余計に腹立ってしゃあなかったけど

あの場合

K は 逃げて正解やと思う

高校に行ってない 板金屋のダチは
めちゃくちゃ 喧嘩が強いからね

暴れ出したらヤバイなぁ〜って
オレらが一番 心配したもん

まあ その後の学校生活で
ますます K がオレを無視したのは言うまでもなく

熱血とか 正義では通用しない

仲間思いの ヤンキーの世界を
彼は 初めて体験したんじゃないの

自分の学生時代に
これほど熱い友達なんて

持ったことないと 思うよ。