どんぽ オヤジ

ダチの Y と
なんか面白れ〜ことないやぁ?

てことで 

その日の午後は 三千円握って 
駅前のパチンコ屋に 行ってみたんよ

オレらの時代はもう 台が自動になっとったけんくさ
あっ! ちゅうまに三千円、、すってもうて

オレ 頭にきて 
台ば ガンッって殴ったら

ヤンキー係員に囲まれて 
あやうく裏で ボコられそうになったんよね

そんな時

「おま〜ち、このへんの不良やろ? よう見るもんなぁ」

って 話しかけてきたのが
どんぽのごたあ顔の ヤバそうなおっさんやった

おっさんは 

ごっつい体に五分刈りで ひげで 
サングラスで 七分のシャツで 作業ズボン

完璧な 昭和の土建屋の親方やった

そのおっさんが 

笑いながら付いて来いて言うわけよね

「おま〜ち、金がのうなったっちゃろ? しきりもせんくせ
  賭け事やらするき〜たい、どら、オレが酒でん飲ましちゃろう」

おっさんが連れて行ってくれたんは
寿屋の近くの 焼き鳥屋やった

おっさんの友達の カエル顔のおっさんも来たけん
ちわ〜すって 挨拶して

「ほんとに何でも食っていいっすかぁ〜?」

「おお! 食ったけんて言うて働かしたりせんけん
    ビールでも酒でも どんどん飲んでよかじぇ」

そらあ オレら食ったよ

怪しいやら そげんと関係ないもん
バッコバコ食って 酔っぱらった

「なら、 気つけて帰れよ!」

おっさんは 赤い顔で右手ばあげて帰りんしゃって
オレら ラッキーやったなぁって思うたね

まあ 昭和の頃って
そんな感じのおっさんは 確かにおったよ
おばさん連中でも 知らんガキに飴玉やる人もおったもん

ばってんたい

それからというもの
駅前でぶらぶらしよったら またあのおっさんが

「おお〜 なんしようとや?」

って 話しかけてきて
ちょこちょこ焼き鳥やら おごってくれるごとなって

オレらのあいだで
「どんぽオヤジ & カエルオヤジの奇跡」みたいな

けっこう伝説になり始めてね

飲むたびに 男の世界の説教やら食らって
だいぶ 成長さしてもらったとよ

そんなある時

どんぽオヤジが 便所に行っとうあいだに
カエルオヤジが オレらに ぼそっと言うた

「親方くさ、、息子ばバイクで亡くしとっちゃんね、、、」

オレら それ聞いて

なんか けっこうズド〜ンて きて
妙にへこんだ気持ちに なったな

だけんそれから 駅前でおっさん見たら
こっちから ちわ〜っす! って言うようになった

しばらく 可愛がってくれよって

いつの間にか
おっさんは 駅前に現れんごとなんしゃった

気になったけど

どんぽオヤジのあだ名以外は なんも知らんずくやん

若さって バカやね

ちゃんとお礼も できんままよ。