犬鳴峠の話

福岡の 久山から
北九方面に抜ける峠ば

犬鳴っていう

昔の 犬鳴峠 (いぬなきとうげ) は

今みたいに でかいトンネルやら なくて
旧道ば ひたすら走らないかんでね

三瀬峠と似て
何十カーブか あったわけね

道は 車2台がやっとの場所もあり
左右から 樹木はうっそうと茂り〜の
気持ち悪い トンネルもあり

夜は真っ暗で
めちゃ 怖かったんよ

昭和70年代は 犬鳴の話が いっぱいあって

電波高の3年が 午前3時に行って 気が狂って
学校を辞めた話やら

崖の上から 女が走って降りてきて
そのまま 谷底へ落ちていった話やら

トンネルの入り口に 白い女が立ってて
抜ける頃には 後部座席に座ってる話やら

犬鳴に 行って帰った車には
窓に手形が いっぱい付いてる話やら、、、、

一番怖かったのは

連れてた女が 急に白いブラウスの
髪の長い姿に変わって

「いっしょに 死のう、、、」

って ささやく話とか、、

足を掴まれる話とか、、

まあ、 いろいろあってね
正直 オレは行きたくなかったけど

ある時

先輩の M さんが 車でブル〜ンと来て
助手席には ブリブリの彼女ば 乗せて

「犬鳴に 行くじぇ〜」

って 言わっしゃあもんで まあ付いて行って

マジ 夜中よ

峠の トンネルの手前に 車止めて
煙草でも 吸うて

「なんやぁ〜 何も出らんやないやぁ〜 (笑)」

って 先輩が笑い飛ばした途端!

先輩の彼女さんが 「うぅ〜〜」 って言いだした

なんや なんや?って言うたら
寒いぃ〜 寒いぃ〜 って

そしたら先輩の目の色が変わって ゴゴォ〜ってエンジンかけて
一目散に 峠ばすっ飛ばして 降りんしゃったもん

とりあえず  
土井あたりまで逃げてきて

UCC のコーヒーでも飲んで

「だいたい 何やったとや おまえ?」

って 先輩が聞いたら

「あたし 昨日から風邪ぎみっちゃんね」 

げな

「脅かすなよ〜おまえ〜」

で、 一件落着はしたもんの
彼女さんに あとで聞いたら

寒いなんて あたし言ってないよ! って言うやん

でもオレら 確かに聞いたもん

あれ

なんやったんやろ、、、。