イチゴ狩り

東区に 三苫って地名があって
当時は農家がいっぱい あった

夜中にオレら ただ 目的もなく
美和台って団地ば そうつきよって

(そうつくは 歩き回ること)

風呂場でも覗けんかね〜思うて
同期の 可愛い女の家やら行ってみたり

座り込んで煙草吸ったり
ジョージア飲んだり、、、

将来について語るんも
そろそろ飽きてきて

「なんか 盗めるもん ないかねぇ」

って オレが言うと ダチが

「畑のイチゴが熟れとっちゃないや?」

って 言うやん

「おお〜っ それいいねぇ〜」 

ってなってね

オレら 闇に紛れながら
こっそり 三苫の農園に近づいて

ビニールハウスに忍び込んだんよね

ハウスは夜でも 電気が付いとるし

中はもう

真っ赤に熟れた イチゴが びっしりやった

だいたい オレのかーちゃんはいつも
イチゴのパックば 2個ぐらいしか買わんけん

家族で割ったら 4個ぐらいしかなくて
包丁で半分に切って 8個、、みたいな、、

それば 砂糖と牛乳で
ぐちゃぐちゃに混ぜて食う 貧乏デザートやったけんくさ

いっぺん 腹いっぱい食ってみたかったわけよ イチゴ
たぶん みんな一度は そう思ったやろ?

それで ガンガン 食いました

その辺の ビニール拾って
家にも だいぶ持って帰った

そしたら 
家に着いた頃から 腹が痛くなってきてね〜
翌日は かなり下痢したばい

当然やろ 洗わずに農薬ごと 食ったんだから

でも めっちゃ 嬉しかったね

あんまり嬉しかったんで
何日かして また行った

するとね、、ビニールハウスの電気が増えとってね
中に入ったら 犬が放してあって

わんわん吠えられたし
遠くから おいさんが追っかけて来た!

「貴様んたちゃ〜 警察に突き出すぞ〜!」

って 本気モードで走って来るの見て

オレら 慌てて逃げて

しかし、なんつっても 若いし 運動部やし
楽勝で逃げ切ったんやけど

捕まったら あれ ヤバかったな

でも

あの夜のイチゴは 
今までで 一番うまかったげな。