1979年の 矢沢さんのツアーは
「The One Night Show」 やったよね
78年のオレらは ビビりながらコンサート観たけん
ふがいなかったな〜 ていうのがあってね
今年は逆襲に出るぜって
めちゃめちゃ 気合い入れたよね
それに K校は 2年になったら長髪が許されるんよ
だけんオレはまず
強めのカールアイパーば かけて
髪が伸びてきたら サイドだけ ストレートにして
前髪は 両方からねじり込みの トサカ作って
しかも オキシドールで 赤く仕上げるという
コンサートに向けて
パーフェクトなヘアースタイルを実現したわけ
で、 九電記念体育館は 暑い時期やった
確かオレ 着物生地の 鶴の絵のアロハやった
オレと ダチのTと あと一人、、、忘れた
とにかく 蚊も刺しに来れないぐらい
キレッキレに突っ張って
会場に入ったら 前の客の椅子 ガコーンて蹴り上げて
「おまーち、座高が高いったい！ もうちょーかがんどけ！」
って 怒鳴って びびらせたりしたな〜
あん時は ごめんね〜
それで 急に会場が暗くなって
さあ 出るぞ出るぞって
あの頃ね 去年のゴールドラッシュで
客のテンションが 異常なレベルやったからね
永ちゃんが出てきた瞬間
もう 客も 何が何だか分からんごとなってね
一人 前に動き出したら 全体がパニックになって
前の席の人間の頭に手かけて 椅子乗り越えて走りだした
もちろんオレらも 25列ぐらいから一番前まで
人の頭やら肩ば 踏みつけて行ったよ
そら 踏まれたやつは怒るわね
だけん あちこちで喧嘩もやりよった
止めに入った警備員まで ボコボコにされたりね
あの夜は 「狂気の沙汰」 まさに 「修羅場」 よ
でも あん時オレ
永ちゃんの足に 手が届くぐらいの位置で
ツバが ガンガン落ちてくる感覚に酔いながら
オレは まるで永ちゃん自身が発光体であるかのような
衝撃的な錯覚を見たんだわ
陶酔するって あんなことを言うんやろうね
途中ちょっと 泣けてきちゃったりも するんよ
帰りに 半殺しに合うとしても なんも関係ない
ひたすら 曲が終らないでくれって 願う感じ、、
コンサートが終わったら
オレら全身が ぐしょ濡れで
手が痺れとったし 声が ぜんぜん出らんやった
あんなステージは もう絶対ない
今後もありえない
どんな歌手が頑張ってもない
昭和の あの時期の
あの日だけの
矢沢永吉のコンサートしか ない。
