カールアイパー

一年生の夏休みの前までに 
坊主頭の髪ば出来るだけ伸ばしといて
夏休みに入ったら 速攻で駅前の床屋に行って
無理やり アイパーかけてもろうた

ヤンキーの髪形を作ってやるのがうまい店
CUT HOUSE NAKAGAWA の親父が
「これは無理ばい 火傷するばい」 
て言うばってん
火傷ぐらい我慢するけんって言うて 
なんとか押し切って コテを当ててもらったけん
髪から煙は出るわ 所どころ火傷はするわで
大変やったけど


とりあえず大仏頭になったら 髪を真っ赤に染めて 
剃り込みも更に深く入れてもらいーの まゆ毛も1ミリに剃りーの
これで 別人28号! なんて古いギャグかましながら
素晴らしい夏休みに突入したたい


水泳の強化合宿もあったばってん
練習は大学のプールやし 日数も多くはなかったね
顧問の先生も 顔ば出さんやったから そこはセーフ!


オレらの地元は海岸べたなんで 休みはよく海に集まって
女呼んで ラジカセで永ちゃんば ガンガンかけて
バーベキューでビールをガブ飲みしよった


ある時 高校の生活指導部が団体でいきなり来たけど
先に遠目に見つけて オレたちは走って逃げ散らかした

見つかると びんた5〜6発に 5厘の坊主に停学やろ
それだけは絶対に 嫌やもん

笹林やら茂みに隠れて 一時間
なかなか帰らんとたい ばか先公どもがくさ
あれはたまらんやったね 蚊には食わるうし暑いし
彼女は海岸にてれ〜と待たして悪いし


今、考えたら分かった
多分あれは通報されたっちゃんね

いっつも くそガキが海岸で酒飲みようって
近所のババアで、しかもどこの高校の不良か 誰の息子か
知っとる奴が言うたっちゃろうと思うばい

田舎はたいがい顔が知れとうけんね
昔はそれが いいとこやった気もするけどね。