ガキの頃、遊びでチュッなんかはあったけど
本気モードの初キスは15才の春やった
YHはオレの宝物やったし、絶対に傷つけたらいかんから
ロマンチックで思い出に残るものにせないかん
いろいろ考えたけど やっぱ海やろね
しかも夕日が落ちる寸前ぐらいがベストやろ〜
その日はチャリンコデートして夕方にオレは言った
「オレ、Yと海で夕日見て帰りてーなー」
彼女、感激しとる、それ分かった
彼女は真面目やからオレは精一杯真面目な格好で
多分紺のヨットパーカーにベージュの綿パンやったね
YHはブルージーンズに白いシャツ、
ブラジャーが透けとって もうたまらん！
そしてオレらが海岸に座ったら曇ってきて
オレンジ色の雲が広がっとるだけやったけど
オレは内心それどころやないたい
何気に肩やら抱いて心臓バクバクいわせながら
顔を近づけると 「え、なになに？」 みたいに
YHは全然空気が読めとらんけん 「いい？」 って聞くと
ようやく分かって 「月が出たらね」 て言うた
それが待っても出らんわけよ、ジュース買ってきても
煙草吸ってみても月は出やがらん
YHの門限は10時、もう9時を回ってしもうたけん
「よっしゃ、今日はもう帰ろうぜ」 って明るく言うと
彼女が黙っとる、なんかいなと思ったらオレを見とる
じっと見てから、 目をつむった
遠い記憶の中では、確かにレモンの味やった
帰りにチャリをガンガン飛ばしながら ウォーと叫んだ
とにかくダチんとこ行って酒飲みまくって朝まで語り明かした
根性焼き、 一個増えた。
